さて、どうしたものか。 意味不明かつ乱れた転移魔術によって吹き飛ばされたのは確かなのだが。 今現在は、異世界の荒野らしき所を…我、セリス、セリアの3人で歩いている。 町も都市らしき物、廃墟さえも見つからない。 どうしたものかと考える間も無く、セリアが話しかけてきた。 セリア「あのクソ魔王!!いつかぶっ倒してやる!!」 …女性なのだから、すこし柔らかい言い方が出来ないのか? セリア「私は太陽界最強の魔王とも呼ばれ、全魔界に名を馳せたのよ?」 恐ろしい魔王様で。 ってか、どんだけ強いんだ。 数日前に、戦闘したこともあったが…一つの術で我が敗れる位だからな…。 我も修行せねばならないか…。 リオ「…セリアの黒歴史はどうでもいいとして…現状況をどうすれば良いと思う?」 この状況を打破するにはどうすれば…。 セリス「テレポで十分じゃないのかな。」 あぁ、それか…さっき試したが発動しなかったんだよな…。 リオ「転移魔術は、この地では発動しない。」 セリア「へぇ…じゃぁこの異世界を調べれば…って、君達の敵が来たみたいだよ?」 敵…天使共が、この異世界にいるのか? 我は、前方にいる人影らしき物を…目を細くして見た。 …天使だな…何で異世界にいるんだ…。 まさか…いや、そんなことは…。 上級天使兵か。 我だけならば、即死だな。 セリア「いやぁ、天界に飛ばされるとはねぇ…。」 セリス「えぇ…。」 我は中級天使兵までしか倒せないというのに…。 どうしたものか…。 あ、そうだ。 リオ「おい、先生。」 セリア「ん?手助け欲しいのかしら?」 だから我の思っている事を読まないでくれ…。 まぁ、しかし状況が状況だ…手助けしてもらうか。 リオ「あぁ、頼む。」 セリア「了解♪」 セリアは空間から大剣を取り出す。 我も戦闘態勢と行きますか。 リオ「セリス、武器化しろ…戦闘態勢に入る。」 以前にも言った気がするが、神天使は能力で武器に成る能力を持っている。 そのお陰で、我は助かっているのだが。 セリス「我と汝、セリスとリオの契約において…我は命ずる…」 おっと…武器は剣で頼むぞ。 リオ「剣でよろしく。」 セリス「神天使の武装武具、剣に変化せよ!!」 セリスの全身が剣に変わっていく。 …以下説明は面倒なので省略する。 ????「あら、リオじゃないの。」 懐かしいような、懐かしくないような声が聞こえてきた。 リオ「貴様は…オファニエル…月の天使か。」 上級天使より面倒なのが来たな…。 セリア「アイツ…ムカつくから倒すね。」 …好きしてくれ。 セリア「〜♪」 みかん殿の所為でセリアにストレスが蓄積されているのだろう。 みかん殿、恐るべし。 何ていうか魔王怖いな…いや、我も魔王なのだが。 オファニエル「何…この気は…。」 セリアの気で間違い無いだろう。 セリア「あー、私の生徒に手を出すようなら即刻死んでもらうけど…いいかな?」 オファニエル「え…いや…その…。」 オファニエルが困惑しているようだ。 …セリアは怪しい笑みを浮かばせているが。 セリア「何も言わないのなら、こっちから行くよ?」 先手必殺ですね、わかります。 オファニエル「…いくしかないか…これも運命。」 運命って…この場で死んだら意味が無いような気がするのだが…。 セリア「…炎滅斬!!(グロア・スレイヴ)」 …。 戦場が一気に焼野原と化しているのだが…。 オファニエル「きゃぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁああ!!」 …オファニエル死す…か? セリア「あーっはっはっはっはっは!!」 戦いが好きな先生は放っておいて…。 我も上級天使兵を倒さなくてはな。 リオ「天と地…天と魔…反逆する力よ、我は全ての理を知りし者…。」 これで…一気に決める!! セリア「これは…理王セジュの理、第56の術?」 上級天使兵「天残攻!!」 天使兵達は、剣に旋風の力を宿らせ攻め込んでくる。 リオ「力の流れにより、今…我に反逆する彼の者共に闇の裁きを!!」 天が暗くなり、黒き雷が上級天使兵共に降り注ぐ。 上級天使「ぬ…ぐはっ!!」 倒したか? オファニエル「生憎だけど、天使の一族は魔に対する抵抗力を持ってるの。」 全く効かない訳では無いようだな。 オファニエル「魔法防御が高ければ、尚更効かないのよ!!」 何て奴等だ。 セリア「あー、御託はいいから…ね?」 さっさと来いって意味か。 リオ「おい、セリア。」 セリア「ん?どうしたの?」 リオ「…一応言っておくが、神天使には気をつけろ。」 セリア「なんで?」 最も注意せねばならない事だからな…。 奴が来る前に伝えとかなくてはな。 リオ「神天使フォグシエルは、魔の力を無力化させて己の力に変換する能力を備えている。」 我が理術で…やっと奴に傷を与えられる位だしな。 セリア「…ふ〜ん…つまり魔を使わないで倒せって事かな?」 まぁ、そうゆう事だな。 セリア「私はこの世界の住民じゃないから、よく分からないケド…」 リオ「…?」 セリア「私の生まれた世界には、魔の術以外にも沢山の術や戦法があったのよね。」 それが、どうしたと言うのだ? セリア「だから、そのフォグシエルを簡単に倒せそうな気がするのよ。」 …確かにな。 ????「その戦い、ちょっと待ったぁぁ!!」 …聞き覚えのある声だな…。 アス「俺の名はアス・フォン・ヘスティミア、人呼んで鬼変のアスだ!!」 兄貴か…天界で何してるんだ…。 アス「よう、リオ。お前にその言いたげなセリフをそっくりそのまま返す。」 皆、思考を読むな!! 何故、我とセリスだけ思考を読めないのだ!! セリス(私も思考を読めるよ?リオ君。) グハッ…我と同類の魔族…天使はいないのか…。 アス「まぁ…その…なんだ、落ち込むな。」 我の気持ちを察してくれ…兄貴。 アス「約1200年前に言った俺の言葉を思い出せ!!」 …あの言葉か。 何故に思い出さねばならないのだ。 意味が分からない。 リオ「己の…信じる意志と…正義を貫け。」 アス「そうだ!!お前だけの意志、お前だけの正義、天を掴んで明日を掴め!!」 …天界ってこんなに熱かったっけなぁ。 兄貴が熱いだけだ。 兄貴が熱いから、天界が熱く感じるんだ…きっと。 アス「俺の意志でも、血族の戒めでも何でもねぇ!!お前はお前自身、突っ走って行け!!」 …そうだな。 …少し暴れるか。 セリス(…暴れすぎないようにね。) 自我がないから良く分からないが、制御はしてみるさ。 オファニエル「さっきから私を無視して、何を話してるのよ!!」 リオ「オファニエル…ちょっと暴れるから、歯ァ食いしばれよ?」 我に掛っている一定の制限を解除する。 セリス(えと…鬼化するんだ。) 安心しろ、大切な者を…もう二度と消されたくないから。 セリス(…うん。) …鬼化成功、自我は2分しか保てないが…やるか。 アス「ソコのお嬢、よく見とけ。あれがリオの力だ。」 セリア「…しっかり見て、分析しないとね。」 アス「…分析って…。」 オファニエル「鬼化したから、何だっていうのよ!!」 リオ「我は鬼王リオ…この世の全てを焼き払う煉獄の炎よ…。」 セリス(リオ君、術は圧縮して撃ってね?) あぁ、分かってる。 リオ「その力、圧縮して我の仇となす者に地獄の裁きを!!」 リオ「チキ・ヘル・ブレイカー!!」 剣から放射される紅き光線がオファニエルを貫く。 煙が立ち上って、どうなっているのか見えない。 アス「おぉ、やったか?」 セリア「…まだね、倒れてないわ。」 えらく硬いな。 セリア「私の無限眼から絶対逃れないわよ?」 相手がどんな格好をしているのかも丸分かりって事か…怖いわッ!! セリア「オファニエル…私が言う条件を聞いてくれるなら、生きて帰ってもいいわよ?」 何という優しいセリア先生。 さて…鬼化解除…勝手に鬼化しないように制限をかけて…。 アス「さて、俺も学園に行きたいのだが。」 オファニエル「条件ですって?」 セリア「そ、条件。魔界アミス・アカデミィに飛ばしてくれると有難いんだけど。」 オファニエル「そんな事、朝飯前ですわ!!」 セリア「ちゃんと4人飛ばすのよ?」 オファニエル「え、えぇ…分かってますわよ!!」 急かすなって…。 アス「お嬢ちゃん、俺に任せな。」 セリア「…アンタ何歳なのよ。」 アス「1億9753万6397歳だけど…何か問題でもあるんか?」 どうでもいいが、魔族は6億歳で死んでしまうらしいな。 あ、お嬢って呼ばれてるから年齢が気になったのか。 セリア「何でもないわ、さっさと転送させてね。」 アス「はいはい…と。済まないが、キミの術…使わして貰うよ。」 オファニエル「え…魔族が天術をどうやって…。」 アス「なんつーか、魔も天の術も原理は同じだからな。その辺の天属性の粒子を使って発動すりゃぁ問題無いだろ。」 そんな理屈が…できるのは兄貴位だな。 用は強引に発動しちまえって事らしいけど。 セリア「ふむ、その手があったわね。」 リオ「セリアは…そんな事出来るのか?」 セリア「常識よ、出来て当たり前だもの。」 セリアの元居た世界は、相当恐ろしいな。 アス「ヘヴン・テレポーション。」 〜学園の校庭〜 セリス「…あれ、武器化が解除されてる。」 世の中は不思議だらけって言うしな。 アス「あぁ、転移した後なら不要だろ?解除系の天術も強引に発動して武器化を解除させてもらったよ。」 セリア「あそこまで強引に発動できたら十分よ。」 確かに…。 あ、そういえば…。 リオ「兄貴、天界で何してたんだ?」 アス「へ?何してたって、そりゃぁ天術の勉強をしてたよ。」 …魔族だから、色々制限掛かったりしたのか…? リオ「不便な所とか無かったのか?」 アス「そうだなぁ…図書館とかで色々制限掛かったから、職人さんをぶっ飛ばした位だな。」 兄貴の武勇伝は聞いてないぞ。 セリア「アスは学園に入学するの?」 アス「ったりめーだ、それしか理由は無いだろ。」 いや、それ以外にも理由はあると思うが…。 セリア「アンタの脳は…死んでるわ。」 変な事言うから、そう言われるんだ。 自業自得だな。 アス「死んでねぇよ!!活気があってイキイキしてるよ!!」 新鮮って意味か。 アス「そうそう、新鮮だから馬鹿じゃねーよ。」 セリス「じ…自分で馬鹿と言っている時点でダメだと思います…。」 …本音を言うと、セリスと同意だ。 兄貴は馬鹿だ。 アス「…ッ!!言うじゃねぇか!!」 セリア「…アスは学室使うの?」 アス「故郷は天使共に破壊されちまったからなぁ…、学室使うしかねぇか。」 故郷は遂に破壊されたのか。 我とセリスが逃走してる中、我が国は破壊されてたのか。 アス「あ、学長召喚してくれ。入学書は既に渡してあるからな。」 準備いいな。 我等は、転移ミスでゴミ処理場に飛んだからな。 アレは臭かった…実に臭かった。 あそこは、臭い思いでしかない。 セリス「あはは…。」 セリア「タクト…召喚。」 我に嫌な事を押し付ける学長が召喚されたぞ。 タクト「…あぁ、アスか。入学書は俺が確認した。」 セリア「学室はどうするの?」 タクト「…学室が欲しいのか!?」 驚いてるな…しかし、悪い予感がする。 アス「あぁ。」 タクト「セリア…リオ達の部屋を直す次いでに増築しといたから、ベッド一つ用意するのと学長室にあるアスの荷物を移動させといてくれ。」 セリア「…は〜い。」 やる気無いな、あの先生。 セリス「私も手伝いましょうか?」 セリア「え…いいの?」 セリス「学室に帰っても暇ですし、ね?」 俺を巻き込む気満々か。 まぁ、いいだろう…時間潰しにはなるだろうしな。 アス「俺も手伝うぜ?」 セリア「アンタはさっさと準備なさい。」 アス「へいへい…。」 そんなこんなで、兄貴も入学することになった…。 我等の学園も慌しくなりそうだ。 第十章に続く