…朝が来た。 昨日は、セリスが一時間早く寝てくれた。 遅刻はこれで克服したも同然と思ったら駄目だ。 奴は中々起きてくれない。 なので、保健室の先生を毎朝呼ぶことにした。 快く引き受けてくれたので遅刻はもうしないだろう…と思ってもまだ駄目だ。 この保健の先生ことカインの実力を見せてくれなくてはなッ!! 実はカイン先生…みかん先生の夫らしいのだ。 同じ職場とは…幸福そうで良さそうだな。 カイン「リオー、こいつ中々起きないぞ?」 寝起きが非常に駄目な奴だから、仕方ないと言っても過言では無いだろう。 我でも対処方法が分からないので、適当に助言でもしとくか。 リオ「頬を優しく"ぺしぺし"と20分の間、叩いて見るといいぞ。」 昨日は…エルという正体不明の生徒が、そうやって起こしたからな。 カイン「は!?20分とか冗談キツイぜ。…お前、"ぺしぺし"とか可愛い事言うじゃねーか。」 可愛い言うな。 アス「お前は先生なんだろうが!!文句言うな!!」 カイン「ンだと、コラァ!?」 …兄貴はややこしい方向に持って行こうとしないでくれ…と本心から思う。 リオ「兄貴…面倒な騒動はなるべく避けたいので、黙ってもらおうか。」 …騒動とは先生が我等の学室に入ってくる事だ。 またココが崩壊されかねないので、忠告しとかなくてならないか。 リオ「昨日、先生がこの部屋をぶっ飛ばしたからな…面倒な騒ぎだけは自重してくれ。」 アス「あぁ…昨日聞いたが…そういう事か、弟の言うことを従っておこう。」 よかった…兄貴が面倒な騒ぎを起こしたら、今度は我等も吹き飛ばされかねないからな。 カイン「チッ…仕方ねぇ…みかんを呼ぶか。」 他力本願かよ!! 己の力で何とかしようっていう精神は無いのかよ!! カイン「この俺に自力で何とかするなんて選択肢は何処にも存在しねぇ!!」 ココにも学園の影響を受けて常識を捨てた奴が居たか。 もう…この学園は色々な意味で終わっているな。 アス「そんな甘ったれた事ァ言ってんじゃねー!!」 カイン「ンだと、コラァ!?」 …そして面倒な事態にされかねない要注意人物が…。 もう、好きにしろ…我には関係無いからな。 カイン「リオォォォオオオオ!!貴様、俺を呼んでおいて…その扱いは酷くないか!?」 リオ「酷く無い。我の常識の範囲で出た結論だ…そして、我の思考を読むな!!」 クソ…どいつもこいつも我の思考を読みやがって…我が何をしたというのだ!? セリス「ん…おはよー。」 お、良いところで起きたな。 リオ「セリス!!」 セリス「あ、はいっ!!」 いきなり大声で呼ばれて驚いているセリス…可愛いな。 …そんな事は後で考えるんだ。 今は逃げることだけを考えるんだ。 リオ「1分で着替え、支度をしろォォォォ!!」 セリス「了解ですっ!!」 アス「ならば、俺様も逃げるスタンバイをするぜッ!!」 兄貴もチキン野郎だったか…。 アス「リオ…お前こそがその称号に相応しい。」 ………兄貴を置いて逃げるか。 リオ「ふん、言ってろ。」 軽く流すことにした。 アス「話が流されちまったぜ。」 カイン「リオォォォォ!!」 何か叫んでる奴がいるな。 カイン「逃がさねぇぞ!!」 ぬお、首を掴まれた!! …。 …そういえば。 セリアと逃走非行中に人間界で、見知らぬオッチャン達に首を鷲掴みされた覚えがあるな。 格闘技で何とか振り払えたから良いものの…あのまま鷲掴みされていたら、首が伸びてるコトだったぞ。 …いや、今は昔話をしている場合では無いだろ!! 何を呑気に我は語っているのだ!! セリス「着替えて、準備万端だよーって…えぇ!?」 また驚いてるよ…。 セリス「待ってて!!今、その人を退かすから!!」 退かすって…何するつもりだ…。 セリス「我はリオ・ヘスティミアと契約せし神天使…」 呪文を室内でするな―――――!! リオ「え…ちょ……おま…。」 セリス「天と魔が一つと成りて、彼の者に天より降り注ぐ業火を与えんッ!!」 天魔の術を発動するな―――ッ!! リオ「天魔…天降業火の術…"スカイ・フレア"か。」 学園の外が暗くなり始めた…。 アレが来る…っ!! リオ「セリス、兄貴!!逃げるぞッ!!セリスが撃った術を回避する為に、教室に行くぞ!!」 天から降り注ぐ八線の太陽光線が我が学室に降り注ぐ――― 前に転移だ!! リオ「我、名をリオ・ヘスティミア。理と法…全と一を統べる使い手となりて我等を移送せよ!!」 お、逃げ切れたか…? カイン先生に直撃したぞ…。 カイン「ぬぉぉぉぉぉおお!?何だこの術はぁぁああぁあ!!」 カイン先生…お疲れ様でした。 〜1220-HOクラスの教室〜 アス「正に危機一髪って奴だな。」 何処が危機一髪だ、兄貴の責任でもあるんだぞ…。 割合で言えば、我が7割で兄貴が3割だな。 カインを呼んだ我が最も原因に近いからな。 セリス「あぅ…今日は先生に怒られるかも…。」 あぁ…これからも我等の学室は数十回にも渡って崩壊しそうだけどな。 リオ「安心しろ、我の原因でもあるんだ。」 アス「俺様も原因だぜ?奴を怒らせちまった可能性があるかもしれないからなッ!!」 反省の色の無い兄貴だな。 そこが兄貴らしいのだが。 ミカ「…アンタ等、カインに何したんだ…。」 リオ「あぁ…セリスが天魔術をカインに直撃させたんだ。」 ミカ「天魔術って…いくら奴が"刹牙の魔王"でも、直撃食らえばタダじゃ済まないと思うケド。」 そんなに天魔術って高等な術だったか…? ってか、"刹牙の魔王"多すぎだろ…。 学園内を今度調べてみるか。 ミカ「…なんていうか…今後のみかんの動きが読めそうな展開になってきたね。」 …ソレは言わないでくれ…。 冗談抜きで怖いから。 ミルゥ「リオは……………………………………………………うん。」 ミルゥよ、言いたい事があるなら言えよ。 昨日は、減らず口叩いてた癖に…何だその……我が即殺されるみたいな…。 考えたくないが…まぁ、今日は死ぬかもな。 アス「試練を越えて漢を磨くのか。」 何か違うぞ…。 しかも、その試練難しすぎるぞ。 難易度は…☆x10憶が妥当だろう。 我の戦闘力を見て言ってるのか? …兄貴の場合だから、直感で言ってる可能性が高いが。 ガガッ!! ………ん? ガガガッ…。 ガガッガガッガガガガッ!! ガガガッガガガガッ!! ガガッ………ドカンッ!! …。 教室のドアに魔術撃ち込んでる奴、誰だ!! セリア「ドアの調子がオカシイわねぇ!!」 朝から妙なテンションで教室のドアを開けようと頑張ってる先生がいた。 ミカ「常日頃の結果が出てきたんじゃない?」 セリア「私はそんなに悪い事はして無いと思うのよね!!」 いや、我等の学室を破壊した時点で、悪い事をしたと思うのだが。 リオ「我の学室を破壊したのは、どうなのだ。」 セリア「あれは…アレはアレ、コレはコレって言うじゃない!!」 いい訳するなよ…。 ミカ「そーいや、セリアは先生やってて忙しくないの?」 ガガッ!! ガガッドガンッドカッ!! ドアが少しずつ凹んできたぞ…。 ってか、魔術撃つな!! 普通には入れないのか!? セリア「そうねぇ…学長がヌルいからねぇ…そんなに忙しくないよ。」 ヌルいのか。 ミカ「…鍵が来るね。」 気で察知できるのか。 浅葱が廊下でセリアと会話を始めていた。 セリア「あ、鍵〜実に良いタイミングで来たね。」 鍵「…なんスか?」 セリア「ドアの調子がオカシイのよ…直してくれない?」 …明らかに悪化させたのはセリアだと思うのだが。 鍵「仕方ないっスね…俺の"妄想を現実に変える能力"の出番スか。」 お前の能力…もう何て言ったら分からないが、救えない事は確かだ。 鍵「…"ドアの再生"。」 おぉ…セリアが凹ました部分も直ったぞ…瞬時に。 セリア「いつも有難うねー♪」 いつも!? いつも雑用に浅葱が頑張っているのか!? …流石は、常識を捨てた者が集う学園だな。 セリア「これで教室に入れ…。」 ガガッガガ!! ガガッ!! ガガッガガガッ!!! セリア「直してもらったハズなのに、ドアの調子が悪いわねぇ!!」 朝から、妙なテンションの先生だな…。 まぁ、世の中には不思議な事があるのだ。 ミカ「だから、常日頃の行いがドアに影響されてるんだって。」 セリア「どんなドアよッ!!」 怖いドアだな。 ドアも常識を捨てたのか…。 このままの勢いで行くと、物質全てが常識に捕らわれない状況なのでは…。 セリア「あらゆる物全ては常識を捨てるなんて、聞いてないわ!!」 鍵「ドア、直りませんねー。」 浅葱よ…突っ立ってないで、何かしたらどうだ。 鍵「セリア先生、俺に任せてください。」 ん? 遂にドアに対して行動するのか? 鍵「…"ドアの再生"。」 おぉ…ドアの見た目が修復されてゆくぞ。 アス「…つーかさぁ。」 何だ兄貴。 名案でも思いついたのか? …兄貴の事だから、ロクな意見しか言わなそうだが。 アス「テレポして教室に入った後に、ドアの修復作業した方が効率良くねぇか?」 …名案だッ!! セリス「…でも、どうやってドアを修復するんですか?」 そうだな…どうやって修復させるか問題だな。 アス「そりゃぁ………なッ!!」 我にウインクするな、我に修復しろと言っているのか。 …仕方ない…やってやるか。 セリア「鍵?一緒にテレポして行こうか。」 鍵「俺、魔術使えないんで、有難いっス。」 浅葱は魔術が使えないのか。 ふむ、いい情報を手に入れた気がする。 …。 〜6分後。〜 セリア「転移座標を決定して無かった所為で、時間掛かったわ。」 座標くらい…転移する前に決めとけよ…。 っと、修復作業だったな。 リオ「我、名をリオ・ヘスティミア。創造の理の力にて、彼の物を修復せよ!!」 直っただろう…ってか、直ってないと困るのだが。 ガラガラガラ…。 ガラガラ…ピッシャン!! 力強くドアを閉めたら、悪化しそうだな…。 セリア「直ってるわ。」 消費魔力24万もしたからな…。 ミカ「そういえば、今日って祝日じゃなかったっけ?」 セリア「えぇ…そうね。」 ミカ「祝日にセリアは何をしに来たのかな?」 セリア「お酒を飲みに来たのよ。」 酒!? わざわざ教室に来てまで酒を飲むのか!? セリア「教室に、お酒を保管してるのよ。」 するなよ!! もう皆、駄目だ。 アス「何で、教室に酒なんか保管してんだ。」 セリア「酒場に持って行って飲む為よ。」 酒場あるのか…。 一体どこにあるのだ…。 リオ「その酒場は、何所にあるんだ?」 セリア「学園の地下34階にあるわよ。」 いや…何て言うか、やけに長いな地下。 セリア「最下層は50階よ。」 …其処には何があるんだ。 セリア「暇なら、50階に行く?」 暇潰しには良いな。 今日は休日だからな…少しはこの学園を知っておいて損はしないだろう。 セリス「いいんですか?」 セリア「うん、タクトが何れ君達を連れていく予定だし。」 我が嫌な学長か…50階には何があるのだ…。 リオ「その君達っていうのは、我とセリスと兄貴か?」 セリア「ん〜、アスは抜き何だけど…来る?」 アス「そうだな…今日は授業も無いみたいだし、行くか。」 兄貴まで来るのか…静かにしてくれれば良いのだが。 セリア「あ、そうそう。」 リオ「ん、何だ?」 セリア「この学園内最大の機密事項だから、天界の者共に話さないでね。」 敵視している我等は、嫌でも話さないと思うが。 セリア「ん…じゃぁ、行こうか。」 何か、緊張するな。 セリア「テレポーテーション。」 〜学園地下50階〜 ????「…セリアか。」 妙に聞き覚えのある声が聞こえてきた。 セリア「久し振りね、"宝箱"さん。」 ????「我は唯の宝箱では無い。」 名前とかあるのか? …何か、この声…引っかかるな。 リオ「…名を言え。」 ????「…リオ・ヘスティミアか、久しいな。」 アス「あぁ…実に懐かしい声だな。」 お前は、我の事を知っているのか。 怪しいな。 アス「安心しろ、お前が最も親しかった奴だ。」 リオ「そ…そうか。」 逃亡生活で、色々忙しかったからな…。 色々忘れているのかもしれん。 ????「我に聞く前に貴様の名を名乗れ、常識だろ?」 リオ「…我の名を知っている時点で、言う意味は無いと思うのだが。」 セリア「正論ね。」 ????「我が名は"レスティーア・ヘル・ヘスティミア"…嘗てリオの父親だった人物だ。」 !? 我の親父だと!? 何で、我の親父が此処にいるのだ? しかも宝箱の姿で…。 第十一章に続く